Michael Ball was quoted on www.nikkei.com speaking about US markets. The article is in Japanese and was posted on 4/20/2016.
NY株ハイライト 立ちはだかる「イエレンの天井」 上値追いに不安も
2016/4/20 7:14
【NQNニューヨーク=岩切清司】19 日の米株式市場でダウ工業株 30 種平均は約9カ月ぶり の高値を付け、2015 年5月 19 日の過去最高値(1万 8312 ドル 39 セント)を視野に入れる。
「米景気は年初の想定ほど悪くない」との見方が米株買いの底流にあるようだ。だが、この日 のダウ平均は下げる場面もあり上昇幅は限られた。投資家は上値追いに自信が持てずにいる。
投資会社ウエザーストーン・キャピタル・マネジメントのマイケル・ボール社長は年初から
3月上旬まで守りの姿勢を貫いていた。金融市場のボラティリティ(変動率)の高まりを米景
気の先行きに対する警戒のシグナルと受け止めた。混乱が一巡した後の米経済指標を注意深く
見ると、市場の描く未来図と実体経済に違いが浮かび上がり始めた。
不況入りという最悪シナリオの回避を確信した3月中旬から、ボール氏は動いた。多くの投
資家が参考指標とするS&P500 種株価指数に連動するファンドを購入。「原油やガスのパイ
プラインといったエネルギーのインフラ関連株にも触手を伸ばしたよ」とポジションを明かし
てくれた。
さらに市場混乱で売りが殺到した高利回りの低格付け(ハイイールド)債も最近まで買い続
けたという。安全資産とされる米国債との利回り差が極端に拡大した状況に投資妙味を感じた。
ボール氏にダウ平均など主要指数が最高値を更新する可能性を聞いた。「あると思う」とし
つつも「そのまま上値を切り上げるとしたら、それは驚きの展開と言わざるを得ない」と慎重
な姿勢だった。「割高感は否めない」と今は一抹の不安を抱える。
米株式の価値を議論する際に1つのヒントになるのはイエレン米連邦準備理事会(FRB)
議長の1年前の警鐘だ。イエレンFRB議長は 15 年5月上旬の講演で「概して現時点でかな り高い水準」と述べた。議長が株式相場について踏み込んだ発言をするのは珍しかった。
当時のS&P500 指数を1つの銘柄として見た予想PER(株価収益率)は 17 倍前後まで 上昇していた。PERは投資家の株式に対する期待値を表すとされる。水準が上がるほど期待 が高まり、株式投資に過熱感が強まる。
イエレン議長の発言以降、同指数のPERの最高水準は 15 年5月下旬に付けた 17.06 倍。
15 年秋に米株式相場が強含んだ局面でも 16.81 倍で頭打ちとなった。17 倍という節目が「イ エレン・シーリング(天井)」として意識されるゆえんだ。
最近の上昇相場でS&P500 指数の予想PERは既に 17 倍に達した。「これ以上、PER
の上昇を伴った米株高は想定できない」(ボール氏)との声が漏れるのも理解できる。
ただ、1年前に比べ米長期金利は低い。「PERが 17~18 倍となっても正当化できる」(サ
ントラスト・プライベート・ウェルス・マネジメントのキース・ラーナー氏)との指摘もある。
世界的に低い金利が株高を演出するのは投資のセオリー。一方でFRBにしてみれば、投資
に過熱感が見え隠れする水準まで相場が戻ったことは利上げの環境が整い始めたことも意味 する。買いを手控えるか、上昇相場に追随するか。投資家は難しい判断を迫られる。